終活物語

「離婚した両親」のお墓と、自分たちのお墓

隆さんは、30年前に離婚した離婚した両親のお墓のことで頭を抱えていた。お互い再婚はしておらず、双方が亡くなったことでお墓問題が勃発。同じお墓には入れられないし、二人のお墓が遠いと参拝が億劫だ。そんな時に見つけたのが…

 

都内在住の永田隆(59歳)は、2年前に亡くなった父(没:88歳)と、半年ほど前に亡くなった母(没:85歳)のお墓のことで悩んでいる。

両親は30年前に離婚したのだが、どちらも再婚することなく独り身で過ごしてきた。

けれども両親ともに、隆や妹の聡子(56歳)の近くに住んでいたため、介護等はきょうだいで協力し、二人を看取った。

しかし現在、父の遺骨は隆の元にある。父は永田家の三男だったため、新たにお墓を探そうと考えていた矢先、母が突然亡くなったのだ。

 

父のお墓・永田家の墓を検討する

「兄さん、父さんの方のお墓はどうするの?」

妹の聡子につつかれ、僕は頭を抱える。

僕も聡子も都内在住だ。“お墓は買っておしまいではなく、お墓参り行くことに意味がある”と考えているため、郊外型は考えられない。

そのためお墓の立地は重要なポイントなのだが、できれば200万円以内で納めたいと考えると、納骨堂か区画の狭いタイプのお墓が有力候補となっていた。

ところが、この二択ですんなり決まりそうにないのだ。

「兄さん、父さんのお墓だけじゃなくて、母さんの方のお墓の事も考えないと。離婚している訳だし、同じお墓に入れるのはちょっと ・・・」

「そうだよなぁ」

聡子の指摘はごもっともで、僕は更に悩んでしまった。離婚している以上、二人を一緒のお墓に入れる訳にはいかない。

しかし僕たち参拝する側の都合を言うと、二人のお墓は極力近く・・・むしろ、同じ敷地内が良かった。

「同じ敷地内だけれど、父と母で別の区画にできるような所はないかな」

「そんな都合の良いお墓、あるかしら?それがあれば、最高なのだけれど」

僕たちは父だけではなく、母の問題もクリアしなければいけなかった。

 

母の遺骨はどうする?

母の遺骨の行先についての選択肢は、次の三つだった。

  • 新たに購入した永田家の墓に入れる
  • 母だけ合葬タイプのお墓に入れる
  • 同じ敷地内に、父(永田家)と母(個人墓)の区画両方を購入する。

しかし聡子にこの三つを提示してみたところ、“母さんだけ合葬タイプにしてしまうのは、差別しているみたいで抵抗がある”と反対されてしまった。

合葬といっても様々なタイプがあり、納骨方法も他の人と遺骨が混ざってしまうものもあれば、遺骨袋に納めて個別に納骨するタイプなどもあるようだ。(しかしいずれも、決して遺骨を雑に扱うわけではない)。

合葬でも毎日のようにお参りに行く人もいるというから、決して弔い方に優劣はないのだが、妹は父と母の弔い方に差が出てしまうことがとにかく気になるようだ。

「そうは言っても、父さんと一緒のお墓に入るのは母さんが嫌がりそうだし・・・」

離婚した父と同じ墓に入ることに対して、母はどう思うだろうか。嫌そうな顔をする母の顔が目に浮かぶ。

「わかった!二人で永田家のお墓に入るのは抵抗があるかもしれないけれど、母さんも、兄さんと一緒なら良いんじゃない?兄さんが入る段階になったら、私が兄さんと母さん、一緒に納骨してあげるわよ」

それもひとつの方法で良いのかもしれない。けれども、自分の死後まで問題を先延ばしにしている感が否めない。

「出来ることならば、自分が元気なうちに解決しておきたいんだよ」

同じ敷地内で二区画を購入するとなると、当然の如く費用も2倍になる。

また、このお墓を次世代へ継ぐとなると、承継者も負担を強いられることになる。あまり合理的な考えだとは思えなかった 。

 

機械式の納骨堂だったら、二区画買えるかも!?

父と母は離婚しているため、同じお墓に入れるのは抵抗がある。

しかしそうかといって、二つのお墓を購入するとお墓参りも大変だし、守っていくことが難しい。でも、母だけ合葬墓にしてしまうのは、弔い方法を差別しているようで嫌だと妹が言っている。

「お盆やお彼岸などは大切にしていきたいから、二人のお墓は同じ場所がベストなんだけどなぁ・・・」

「でも、都内で200万円以内で検討したいんでしょ?そんな所、あるのかしら・・・」

そんな矢先、家のポストにとあるチラシが入っていた。

それを見て、僕は思わず“これだ!”と叫んでしまった。

そしてそのチラシを持って家へ上がり、早速、聡子へ電話をする。

「来週の土曜、空いてるか?納骨堂へ、一緒に見学へいかない?最近、こういった納骨堂が流行っているみたいで」

近年、23区で急速に増えているという機械式の納骨堂。

どこも駅から近く、立地等の条件は良い。値段も50万円くらいから150万円くらい(高いものでは300万円のもある)など予算に応じて選べるような柔軟さもある。

「え〜遺骨が、機械でまわって出てくるの!?それは抵抗があるわぁ」

そんな風に最初は納得のいっていかぬ様子の聡子だったが、僕と話しているうちに考えが変わってきたようだ。

「それがさ、納骨堂は継ぐ人がいなくても買えるんだよ。それに何より、2区画買うこともできるんだよ!」

「本当に!?すごいわね、それは」

また、多くの納骨堂ではフロアや列によって納骨される。ブロックが異なっているのも好条件だった。

父と母の納骨先を別のブロックにしておけば、同じ建物内でありながら、バッティングすることもない。

「父さんも母さんもこれなら喧嘩もしないし、問題が全てクリアになったね。一つは永田家の墓として購入し、父が入る。そしてもうひとつは個人墓として、母が入る」

「そうね。母さんの遺骨は一定期間(50年)を過ぎたら、遺骨は取り出して合葬墓に納めることもできるし。或いは、その頃にはもう兄さんの遺骨が入っているとしたら、永田家の墓に改葬しても良いわね」

 

納骨堂を2区画買うという発想は、最初は思い浮かばなかった。しかし実際にお墓をみると、“これしかない!!”とピンと来たのだ。

2区画を買うのは割高にはなってしまうが、父と母の思い、そして自分たちきょうだいの思いが繁栄される方法としては、最善の選択だったと思う。

僕たちは非常に満足しながら、同じ場所で、父と母、交互に墓参りをしている。

文:三浦 マキ / 監修:吉川 美津子

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