お墓へ納骨するとき、少しでも費用負担を軽減させたいと思い、自分で納骨をしたいと考えている方もいるのではないでしょうか? 結論から言えば、自分でお墓に納骨しても問題はありません。
しかし、事前に手続き方法を確認しておくことが重要です。特に、墓石を動かしたり自分の判断のみで納骨をおこなったりすることは、のちにトラブルへ発展してしまう可能性があるので注意しておきましょう。
本記事では、お墓への納骨を自分でおこなう方法や手続き、準備物、墓石の動かし方について詳しく解説していきます。近年の納骨方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
お墓への納骨は自分でしても問題ない
結論から言えば、お墓への納骨は自分でおこなっても問題ありません。
ただし、手続きなどが必要なときには、事前に済ませておく必要があります。納骨の手続きは、墓地の管理事務所や指定業者への書類の提出などで、難しいことではありません。
しかし、お墓の形状によっては自分で石材を動かさなければならず、重量があるため危険を伴う可能性があります。状況によっては自分で納骨することが難しい場合もあるので、事前にお墓の構造を確認しておきましょう。
お墓への納骨を自分でおこなうときに用意するもの
納骨をするときには、まず埋葬許可証を準備しましょう。埋葬許可証はお墓に納骨するために必要で、自分で納骨する場合は、市町村役場へ行き発行してもらわなければなりません。そのため、以下の書類を準備しておいてください。
- ●死亡届
- ●死亡診断書または死体検案書などの証明書
- ●死体埋火葬許可の申請書
死亡診断書は、故人が死亡したときに立ち会った医師が記入してくれます。死亡診断書を市町村役場へ提出すると、死亡届が受理されて、死体埋火葬許可証を発行してもらえます。なお、死亡診断書の提出は死後7日以内におこなわなければなりません。
埋葬するときには、火葬場で火葬執行済の認印をもらった死体埋火葬許可証が「埋葬許可証」となるため、許可証は納骨まで紛失しないよう大切に保管しておいてください。
納骨の手続きには施主の印鑑が必要となる場合があり、忘れずに用意しておきましょう。
その他、納骨するときには喪服や数珠、お供え物、僧侶に渡すお布施やお車代も準備しておかなければなりません。
お墓への納骨を自分でおこなうときに必要な手続き
お墓への納骨を自分でおこなうときに必要となる手続きを、1つずつ詳しく解説します。
書類が不足していたり、不備があったりすると自分で納骨できなくなってしまうため、ぜひ参考にしてください。
墓地や霊園の管理者に連絡する
業者に依頼せず自分でお墓に納骨するなら、事前に墓地や霊園の管理者に電話などで連絡し、納骨予定日程や自分で納骨することに了承を得ておきましょう。
もし管理者の許可を得ずに自分で納骨してしまうと、のちに大きなトラブルとなってしまう可能性があるため、必ず許可を得なければなりません。
また、納骨に必要な書類や持ち物、手数料などを確認し、漏れのないようにしておきましょう。
墓地の種類によって管理者が異なるので、迷ったときは下記を参考にしてください。
墓地の種類 | 墓地管理者 |
寺院墓地 | 寺院 |
公営霊園 | 管理事務所や墓地のある市区町村 |
共同墓地 | 墓地管理委員会または墓地のある市区町村 |
民営霊園 | 管理事務所や経営主体の寺院、公益法人 |
墓地の管理者に埋葬許可証を提出する
事前連絡で墓地や霊園の管理者に納骨の許可を得たら、埋葬許可証を提出しましょう。
このとき提出する埋葬許可証は、火葬執行済の証明印が押印されたものです。
墓地や霊園によっては、自分で納骨する場合も手続きに印鑑や手数料が必要となる場合があるため、管理者に確認しながら手続きを進めましょう。
納骨式をおこなう場合は僧侶を手配する
自分でお墓へ納骨する場合でも、納骨式をおこなうことができます。納骨式で読経をしてもらうため、僧侶の手配をしましょう。
つきあいのある菩提寺や近所のお寺に連絡し、自分で納骨するための納骨式を依頼したい旨を伝え、納骨式の日程の打ち合わせをしておいてください。納骨式の当日、僧侶にどのような手段でお墓へ足を運んでもらうのかも確認し、自家用車なら駐車場所の確保も手配しておきましょう。
納骨室の中を確認する
事前に納骨室の空きスペースや内部の構造を確認しておくと、納骨当日はスムーズに執りおこなえます。
一般的に、墓石の下に納骨室がありますが、お墓によっては石材が目地止めされている場合があり、納骨当日はカッターやバール、もとに戻すためのコーキング剤を持参しなければなりません。
納骨室には水が溜まっている場合もあり、排水して掃除しておく必要があります。水が溜まったまま納骨すると、骨壺にカビが繁殖してしまうので排水は必ずしておきましょう。
お墓への納骨を自分でおこなうときの流れ
自分でお墓へ納骨する場合、3つのステップで進めれば難しいことではありません。
ポイントを押さえておけば当日までバタバタせずに済むので、スムーズに納骨をするためにも、ぜひ覚えておきましょう。
ステップ1:墓地・霊園に埋葬許可証を提出する
納骨をする墓地や霊園の管理者に、埋葬許可証を提出しなければ納骨することができません。「墓地、埋葬に関する法律」によって、業者や個人関係なく提出が義務付けられているのです。
もしも埋葬許可証を紛失してしまった場合は、市区町村で再発行してもらうことができます。再発行の申請書と印鑑、マイナンバーカードなどの本人確認書類が必要となり有料です。市区町村で火葬許可申請書が保管されていれば、時間はかかりますが再発行してもらえます。
ただし、埋葬許可証を紛失していることに気づいた時点で死後5年を経過している場合は、あらたに火葬許可証が必要となり、火葬場で再発行の手続きをしなければなりません。
一般的に、埋葬許可証は火葬後に骨壺箱へ入れていることが多いため、納骨まで紛失しないよう気をつけましょう。
ステップ2:納骨室を開けて骨壺を納める
通常は、石材店が納骨室の開閉や骨壺の収納をおこなってくれますが、自分で納骨する場合はすべて自分でおこなわなければなりません。
まず、地面に大きめのタオルを敷いて香炉を下ろし、置きます。香炉に金具がついていて取り外しが可能なら外しておきましょう。納骨室の入り口付近の掃除をして、骨壺を納めます。
地域によっては、遺骨を遺骨袋に入れてから納骨するなど、納骨方法のしきたりがある場合があるので、事前に確認しておくと安心です。
納骨室は、無理にこじあけようとすると、お墓の破損やケガのもとになるため、丁寧に取り扱いましょう。納骨室へ納めた後は、納骨室を閉めて香炉を元通りにすれば納骨完了です。
ステップ3:お供え物やお花、線香などをお供えして供養する
納骨が終わったら、お花やお供え物、線香を立てて故人の供養をおこないます。僧侶に依頼している場合は、このときにお経をあげてもらいます。
読経が終わったら僧侶へお布施を渡します。納骨式におけるお布施の相場は3~5万円ほどですが、事前に家族や親族へ確認しておいた方が良いでしょう。
納骨式をおこなわない場合は、自分たちだけで手を合わせて供養し、納骨は終了となります。
自分でお墓に納骨する方法|墓石の動かし方を紹介
納骨室を開けるとき、種類によって開扉するときの手順が異なります。納骨室の種類には、関西式と関東式があり、それぞれ特徴があるのです。
納骨するときに慌てないよう、お墓がどのようなタイプなのか確認しておきましょう。
関西式で納骨する場合
関西式のお墓は、香炉や供物台の裏に納骨室があるため、イメージとしてはお墓の中に納骨室があると考えておけば良いでしょう。納骨のステップは以下のようになります。
- 1.香炉をスライドする
- 2.サラシに納骨室を移す
香炉を横にスライドするだけで納骨室の開扉ができるので、関東式に比べて比較的簡単に納骨がおこなえます。
ただし、香炉は非常に重たいため、スライドさせるときに指を挟んだり、落としたりしないよう注意してください。納骨室の扉付近が汚れていたら拭き取り、石材に傷をつけないように注意しておきましょう。
石材は目地止めされていないことが多く、香炉を横へスライドさせ、サラシに遺骨を移して納骨します。納骨室が供物台の裏にある場合は、重い供物台は持ち上げず、手前に傾けて納骨するようにしてください。
関東式で納骨する場合
関東式のお墓は、足元にある拝石の下に納骨室があるため、イメージとしてはお墓の下(地中)に納骨室があると考えてください。納骨は以下のステップでおこないます。
- 1.香炉を移動させる
- 2.目地止めをカットして拝石を持ち上げる
- 3.納骨室へ入って納骨する
拝石は隣接する墓石との隙間を埋めるため、セメントやコーティング剤で目地止めされているケースが多く、バールなどの器具を用いて拝石をテコの原理で持ち上げることになります。拝石は数十kgと非常に重いため、男性の力が必要になると言えるでしょう。
納骨室は広いため、納骨室へ入って納骨してください。
【補足】浄土真宗と曹洞宗の納骨の仕方の違い
法要や供養は宗派によって方法が異なり、お墓の文字や読経、数珠など様々な違いがあります。
日本の仏教には代表的な宗派が7つありますが、ここでは曹洞宗と浄土真宗を比較しながら紹介します。
法要・供養の仕方が異なる
日本の仏教では、三十三回忌が弔いあげとされており、三十三回忌で故人に対する個別法要を終え、以後はご先祖様として供養することが一般的とされています。
しかし、曹洞宗は五十回忌を弔いあげにすることがあり、その時期は地域によって相違します。
一方、浄土真宗では、故人は極楽浄土へ行けると考えられており、追善供養はしなくて良いと考えられています。そのため、卒塔婆を立てて供養することはなく、法要は遺族が阿弥陀仏の教えを聞く場だと考えられているのです。
このように、法要や供養の方法は宗派によって異なるため、マナーやしきたりを守るためにも、事前によく確認しておきましょう。
お墓に刻む文字が異なる
お墓の形に宗派による大きな違いはないものの、お墓に刻む文字は宗派によって異なります。曹洞宗では、一筆で書いた図形の丸「円相」が一番上に刻まれるケースが多く、正面には「南無釈迦牟尼佛」と刻まれている特徴があります。
一方、浄土真宗では「南無阿弥陀仏」や極楽浄土でともに会おうという意味の「俱会一処」が多くなっており、家名は刻んでいますが梵字を刻むことはありません。
近年では、宗派独自の文字を刻まなくても良くなってきており、故人が好きだった言葉をお墓に刻むことも増えてきています。もちろん、「〇〇家之墓」だけでも問題ありません。ただし、違う宗派が好んで使う文字をお墓に掘ることは、マナーとして避けておいた方が良いでしょう。
数珠の種類や線香のあげ方が異なる
数珠の種類や線香のあげ方にも宗派の違いがあります。どの宗派でも一連の略式念珠なら問題ありませんが、本格的な供養の際には、宗派の正式な本式念珠を購入しておくことも考えておきましょう。
曹洞宗と浄土真宗では、数珠の種類と線香のあげ方は以下のようになっています。
宗派 | 本式念珠の特徴 | 線香のあげ方 |
曹洞宗 | 金属の輪がついた二連念珠 | 線香は1本 |
浄土真宗 | 男性:18~27玉の一連念珠
女性:86~108玉の二連念珠 |
線香1本を半分に折って火をつけ、香炉に寝かせて供える |
特に線香のあげ方は、宗派によって本数が異なるため、恥ずかしい思いをしないよう、覚えておいた方が良いでしょう。
お墓への納骨を自分でおこなうときの注意点
自分でお墓への納骨をおこなうときに注意すべき4つのポイントを紹介します。のちのトラブルを防ぐためにも、十分な配慮をして納骨をおこないましょう。
墓石に傷や汚れがつかないように注意する
納骨をおこなうときは、墓石に損傷を与えないように注意しましょう。
墓石は非常に傷つきやすい素材であるため、少しでも雑に扱うと傷がついたり割れたりしてしまいます。
納骨のときには、厚手のバスタオルなどで覆い、特に墓石の角が欠けてしまわないよう、丁寧に取り扱うようにしてください。
また、周囲の墓石への配慮も必要で、納骨のときの作業で他の墓石を傷つけないよう、十分注意しておきましょう。
納骨するお墓の納骨室を確認しておく
お墓の納骨室を事前に確認しておかなければ、納骨する直前に慌ててしまう可能性があります。
- ●納骨室が開けられず納骨できない
- ●納骨室に骨壺を置くスペースがない
- ●石材が重くて動かせない
関西式のように、香炉をスライドさせるだけで納骨室を開閉できるお墓なら、自分で納骨をするときに大きな問題は発生しにくいと言えます。
しかし、関東式のように重い拝石を持ち上げたり、目地止めをカットしたりと大掛かりになるときは、自分で納骨することは困難です。
拝石は非常に重いため、ケガをするリスクがあり、納骨は業者に任せた方が良いと言えるでしょう。
納骨後にしっかりと蓋をする
納骨後は、納骨室の扉をしっかり閉めて蓋をしなければなりません。
雨水や虫の侵入は、納骨室にカビを繁殖させてしまいます。関東式ならシーリング材やセメントなどで、しっかりと目地止めして蓋をしておきましょう。
しかし、目地止めは素人がおこなうと隙間があいてしまう可能性があります。目地止めが必要なお墓の場合は、業者に納骨を任せた方が将来にわたって安心だと言えるでしょう。
あらかじめ親族の同意を得ておく
一般的に、納骨は寺院や石材店など専門業者に依頼することが多いため、自分で納骨するときは親族の同意を事前に得ておきましょう。
納骨方法を知らせないまま、勝手に納骨を済ませてしまうと、親族とのトラブルにもなりかねません。自分で納骨することが悪いわけではありませんが、なぜ自分で納骨をしたいのかという理由を添えて、親族に納得してもらっておく方が良いと言えるでしょう。
お墓への納骨を自分でしないほうが良いケース
お墓への納骨は自分でもおこなえますが、状況によっては自分で納骨をしないほうが良いケースがあります。
納骨を自分でしたいと思っていても、以下の内容に該当していると自分では納骨するのが難しいため、よく確認しておいてください。
墓地に指定石材店がある
霊園や墓地に指定する石材店がある場合は、自分で納骨をすることができず、指定石材店へ納骨の依頼をしなければなりません。
指定石材店とは、その霊園や墓地の工事ができる業者を指しており、遺族であっても石材店以外はお墓での作業ができないのです。
寺院墓地や民営霊園の多くで指定石材店が定められているため、自分で納骨を考えている方は、手続きをする前に確認しておきましょう。
重い石材を動かす必要がある
重さが数十kgもある石材を動かす作業は、ケガをするリスクも高く大変危険です。
慣れない作業は、ケガだけでなく墓石を損傷させたり、無理な作業で他の墓石まで巻き込んで傷をつけたりしてしまいます。
自分の身体や墓石を守るためにも、重い石材を動かす必要があるときは、石材店へ依頼した方が良いでしょう。
お墓に目地止めがされている
石材の隙間に目地止めがある場合は、自分で納骨することは諦めて石材店へ依頼しましょう。
目地止めのカットや納骨後の修復作業が必要となるため、素人には難しいと言えます。
作業で石材に傷を入れてしまう可能性も高く、納骨後のお墓を綺麗に保つためにも、専門の石材店に納骨してもらいましょう。
お墓を自分で納骨するときのよくある質問
お墓に自分で納骨するときのよくある質問をまとめてみました。
なぜ自分で納骨をしたいのかという理由もさることながら、問題点がないかどうか疑問を解決した上で親族へ納骨方法の話をした方が良いと言えます。
質問への回答を参考に、自分で納骨するときに役立ててください。
納骨を家族のみでおこなうのは問題ない?
納骨は家族だけでおこなっても問題ありません。
親族が多く集まる四十九日の法要後に納骨を済ませることが一般的です。昔からの納骨式では、親族を呼ぶことになっていますが、実際は、納骨への参加に決まりはないのです。
つまり、親族の同意やお墓の管理者からの許可を得られれば、家族だけで納骨ができます。
近年では、実家で進行する菩提寺から離檀した無宗教の家庭も多くなっていることから、読経をともなう納骨式を執りおこなわないことも増えてきているのです。
お墓に納骨するときの費用は?
一般的なお墓への納骨は、数万円から10万円前後が必要です。
- ●納骨のためにお墓を開閉するための作業費用
- ●彫刻料
- ●卒塔婆料
- ●お布施やお車代、御膳料
- ●納骨後の会食代
親族や読経を含む納骨式をおこなわず、自分で納骨する場合は費用の負担を軽減できますが、お墓の構造によっては一人での納骨の作業が困難となる場合もあります。
新しくお墓を作る場合は、さらに200万円ほどの費用が必要となるため、近年ではお墓を建てる費用を抑えるために、永代供養や納骨堂への納骨を選ぶ人が増えてきています。
納骨はいつまでにするもの?
お墓に関する「墓地、埋葬等に関する法律」には、納骨時期についての定めはありません。
つまり遺族の気持ち次第で、いつ納骨をしても良いということになるのです。
一般的に、先祖代々のお墓がある場合は、親族の集まる火葬の当日や四十九日に納骨されています。
新しくお墓を建てる場合は、百箇日や一周忌まで自宅やお寺で安置して納骨するケースが多くなっています。
お墓に納骨室がないものもある?
近年のお墓には、基本的に納骨室がないということはありません。
しかし、土葬の頃に作られたお墓の場合は納骨室がありません。土葬は深さ1.5から2メートルの地中に遺体が埋葬されており、その地上部分にお墓が建っています。
日本では一部の地域を除き、昭和30年頃には火葬に変わっており、納骨室のないお墓はほとんど見かけなくなりました。
自分で納骨できるが業者に任せたほうが安心
お墓への納骨は自分でもできますが、お墓の損傷や自分がケガをするリスクを考えると、大きなメリットはないと言えます。お墓へ納骨する費用を軽減する目的で、納骨を自分でおこなおうとしているなら、納骨堂を利用すると費用を抑えられ、立地の良い場所ならお墓参りにも訪れやすくなります。
納骨堂の雰囲気を知りたい場合は、ゆめみどうなら予約不要で見学が可能です。麻布十番から徒歩圏内にあるゆめみどうは、季節や天候を気にせずゆっくりお参りができます。費用面から納骨を自分でおこなおうとしているなら、危険リスクもなく費用を軽減できるゆめみどうにお任せください。気になることがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。