大切な人が亡くなり、悲しみに浸るまもなく行われるお葬式を終え、少しばかり経ってから行う納骨は、ある意味お別れの一区切りのようなものです。
納骨は法事の1つに数えられますが、いつ行えば良いのか、またその後の法事の段取りはどのように進めて行けば良いのか分からず困る方も多いでしょう。
ここでは、納骨や法事の時期や段取りのしかた、ポイント、注意点をご紹介します。
目次
納骨の時期
納骨とは、遺骨をお墓に埋葬することを指します。そして、その儀式のことを納骨式と呼びます。仏教での納骨式は、お経をあげてお線香やお花を供え、故人を弔います。お墓は、一般的なお墓をはじめ、納骨堂などが選ばれることもあります。
一般的には、四十九日法要や百箇日法要に合わせて納骨されることが多いですが、いつまでに行わなければならないという法律上の明確な決まりはありません。忌明け法要である、四十九日法要を終えたあとなら、いつでも良いと考えられています。ただ、納骨式が単独で行われることは珍しく、法要に合わせて行われるのが通例です。
ただ、なかには、気持ちの整理がつかず遺骨をお墓に入れることを躊躇したり、お墓の準備が進まなかったりして、数年経っても自宅に遺骨を安置する方もいらっしゃいます。いずれ気持ちの整理や準備が整った時のために、埋葬許可証は失くさないよう注意が必要です。
納骨式は四十九日法要に間に合わないこともある
先祖代々受け継がれてきたお墓がある場合は、お墓を新しくつくる必要はないため、四十九日法要にあわせて納骨式が行われることが多いです。
しかし、新しいお墓をつくる場合は、四十九日法要までに間に合わせることが難しいかもしれません。一般的に、お墓が建つまでに要する期間は2ヶ月~3ヶ月が目安です。
そのため、四十九日を過ぎた次の法要である、百箇日や一周忌で納骨式を行うことも珍しくありません。
納骨の場所
最近は、遺骨の埋葬場所にあまりこだわらない人が増えてきたといわれています。
これは、少子高齢化が進み、お墓の後継者がいなくなるケースも多いこと、お墓に対する人々の考え方の多様化が進んだことなどが関係していると考えられます。
そのため、一般的なお墓ではなく、永代供養ができる寺院や霊園、納骨堂などに納骨をする人も増えています。
墓地・霊園
従来の方法として、最も一般的といえるのが、墓地や霊園での納骨です。墓地や霊園の中に土地を購入し、お墓を建てて納骨します。墓地や霊園のある場所は、寺院、公営の土地、民営の土地などさまざまです。
納骨堂
遺骨を収蔵する建物のことを納骨堂と呼びます。寺院や霊園の敷地の一部に建てられることが多く、個別にお墓を建てなくても良いことや、永代供養ができるところが多いこと、アクセスしやすい立地が多いことなどの理由から、最近ではさまざまなタイプの納骨堂が増えています。
納骨堂の場合、お掃除や草むしりといった管理が必要なく、お参りしたい時に気軽に足を運べるため、いずれお墓の後継者がいなくなることを不安に感じている方が墓じまいを行うにあたり利用されるケースも多々あります。
合祀墓・合同墓
合祀墓や合同墓、合葬墓など、呼び方はいくつかありますが、これらは永代供養ができる大きな1つのお墓のことを指します。家族や先祖代々の遺骨だけでなく、血縁関係のない複数の方の遺骨とともに大きなお墓の中に入り、長きにわたり供養してもらえるお墓です。
多くの場合、遺骨は骨壺から取り出した状態で収蔵されるため、一度埋葬したあとは取り出すことができません。一般的なお墓に慣れている方にとっては、故人とのつながりを感じにくいなどの声もあるかもしれません。しかし、安価で納骨ができることやお墓の管理をする必要がないこと、永代供養ができることなどのメリットを感じる方も多いです。
樹木葬
墓石の代わりに樹木をシンボルとし、その樹木の下に遺骨を埋める埋葬方法を指します。自然に還るという意味合いが強く感じられ、注目を集めている納骨方法の1つです。こちらも、永代供養先として選びやすいことや、墓石を建てないため経済的な負担を減らしやすいことなどがメリットでしょう。ただし、合祀墓と同様に、埋葬後は遺骨を取り出すことが難しくなります。
法事とは
法事とは、仏教行事全般を示す言葉です。よく、四十九日や一周忌などの行事のことを法事だと勘違いされることも多いですが、これらの故人を供養するために行う行事自体は「法要」であり、法要後の会食までを含めた全般的なものを「法事」と呼びます。
法事の種類は大きく分けて2つ
法事には、「忌日法要」と「年忌法要」があります。地域や宗派によって少し違いもあり、実際にすべての法事が行われるケースは少ないですが、理解しておくに越したことはありません。
忌日法要
忌日法要は、命日から日数を数えて行う、仏教の世界の考え方に沿って行われる供養です。初七日や四十九日といった言葉は、多くの方にとって馴染みがあるのではないでしょうか。仏教では、人が亡くなりその魂は7日ごとに裁きを受け、極楽浄土に行けるかどうか判断されると信じられています。そして、その最終的な判断が下るのが、四十九日というわけです。
つまり、初七日から四十九日の間には、本来ならば7日ごとに忌日法要があり得るのですが、実際は節目となる初七日と四十九日だけ行うのが一般的です。
・初七日(しょなのか・命日含め7日目)
・二七日(ふたなのか・命日含め14日目)
・三七日(さんしちにち・命日含め21日目)
・四七日(よなのか・命日含め28日目)
・五七日/三十五日(いつなのか/さんじゅうごにち・命日含め35日目)
・六七日(むなのか・命日含め42日目)
・七七日/四十九日(なななのか/しじゅうくにち・命日含め49日目)
四十九日は、魂が極楽浄土へ行けるように親族や縁のある人たちが集まって冥福を祈る大事な法要です。これを大きな節目とし、忌明けにするのが通例です。
・百箇日
亡くなってから百日目に行う法要を、百箇日法要と呼びます。遺族は、故人が亡くなったことに悲しむ段階から次のステップへと進むタイミングとされており、四十九日法要で間に合わなかった納骨式を一緒に行うことも多いです。
年忌法要
忌日法要は亡くなった日から日数を数えて行う法要ですが、年忌法要は年数ごとに行っていく法要のことを指します。年忌法要の場合、本来ならば命日に合わせて行うものですが、平日など人が集まりにくい場合は土日や祝日で前倒しして行うケースが多いです。
・一周忌
故人の命日から満1年で行われる法要です。一周忌は遺族にとって大きな節目であり、これを過ぎると喪が明けます。
・三回忌
命日から満3年目に行う法要です。年忌法要の中でも重要視されており、大きな節目に数えられます。実際、三回忌以降の法要は行わない家庭も多くなっています。
・七回忌
命日から満6年目に行う法要です。一周忌や三回忌ほど大規模に行われることは少ないですが、七回忌までは行う家庭も多いです。
その後は、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌と続き、厳密に言えば百回忌まであります。最終年忌は三十三回忌であることが多いですが、地域や宗派によっては五十回忌を最終年忌とするところもあります。
法事を行う段取りのしかた・注意点
故人が亡くなり、まだ気持ちの整理をつけている最中にも、法事の準備に取り掛かっていかなければ間に合わないこともあります。
土壇場になって慌てないように、法事の準備のしかたも押さえておきましょう。
法事の日取りを決めお寺や会場の都合を聞く
法事は、人が亡くなり49日目には四十九日、100日目には百箇日と続きます。これらは、亡くなった日から数えてちょうどその日に行えれば良いものの、実際は集まる人やお寺、会場の都合によって難しい場合もあります。
六曜を気にする人がいたり、平日の法事が難しかったりして、ちょうどの日に法事ができない場合は、先送りにはせず早めて行うのが一般的です。週末は法事に選ばれやすいため、お寺や会場は込み合います。できるだけ希望日に法事ができるように、お寺や会場の都合は早めに聞いて予約しましょう。
早めに準備をすすめる
法事の日取りが決まったら、出席者への案内はできるだけ早く行いましょう。目安としては、準備は40日前よりはじめ、法事の2週間前には出席の有無が分かり人数が決定している状態にしておくことが望ましいです。会食を行う場合は、食事の段取りもあるため、人数は早めに把握しましょう。
法事の全体的な流れを調べておく
法事に慣れているという人は、そう多くありません。自分が中心になって準備をする場合は、なおさら大変です。慣れない法事ができるだけ無事にスムーズに行えるよう、内容や流れについては事前に調べて把握しておきましょう。
納骨式の段取りとしかた・注意点
四十九日や百箇日で納骨式も一緒に行う方も多いことから、納骨式の段取りについてもあわせて確認しておきましょう。
納骨先を決める
先にご説明したとおり、現代は納骨先も従来のお墓だけでなく納骨堂などが選ばれやすくなっています。特に、先祖代々受け継いできたお墓がない場合や、自分以降のお墓の継承者がいない場合は、永代供養ができるところでの納骨の必要性を強く感じるかもしれませんね。
納骨式の日取りを決める
お墓の準備のことを考えて、納骨日をいつにするか決めます。先祖代々のお墓が既にある場合は、四十九日の法要と一緒に行うのが一般的ですが、この日にしなければならないという決まりはありません。親族と話し合って決めましょう。
石材店にお墓の字を彫ってもらう
納骨式の日取りの目安がついたら、石材店にお墓の準備を依頼することとなります。先祖から続くお墓に入る場合も、字彫りは必要です。時間に余裕をもたせ、できるだけ早い段階で依頼されることをおすすめします。納骨式では、遺骨をお墓に埋葬するために蓋を開け閉めする必要もあるため、この時に併せて依頼しておきましょう。
埋葬許可証を準備する
埋葬許可証は、遺骨をお墓に収蔵する時に必ず持っておかなければならない書類です。この書類なく納骨することは違反となります。納骨時に、その墓地等の管理者へ提出することとなるため、必ず失くさないように保管しておきましょう。埋葬許可証は、死亡届を役場で出したあと、発行される書類です。火葬時にも必要になり、火葬後はその日時を記載して収骨後に遺族へと返却されます。場合によっては、火葬場のスタッフが骨壺を納める箱に入れて返却することもあるため、見当たらない場合は確認しましょう。
参列者への連絡
納骨式に誰を呼ぶのかについては、特に決まりはありません。故人の意向を聞いていた場合は、その通りに進めてあげましょう。生前故人と親しくされてきた人など、納骨式に参列したいという方がいらっしゃる場合は、早めに日程を連絡します。連絡は、電話で直接連絡するか、案内状を出すかのいずれかを選ぶ方が多いです。もし、家族だけで納骨式をすると決めた場合は、その旨をきちんと伝えましょう。
お供え物と引き出物の手配
お供え物は、お墓を綺麗にした後、故人が好きだったものをお供えします。お菓子やお酒、丸餅などがよく選ばれますが、この限りではありません。引き出物は、納骨式に参加してくれた人に対して、会食後に持ち帰ってもらいます。お茶や調味料といった消え物や、タオル等の日用品が一般的です。
納骨式の流れ
納骨式当日は、以下の流れに沿って行われます。
施主の挨拶
納骨式は、お坊さんや出席者が集まったあと、施主の挨拶から始まります。出席してくれたことへのお礼を伝えましょう。
納骨
従来のお墓へと納骨する場合は、石材店の方に蓋を開けてもらいます。納骨が済んだら、お坊さんによる読経、遺族から順番に焼香という流れです。宗派や出席者の数にもよりますが、儀式自体は1時間ほどで終わることが多いです。
会食
納骨式のあとは、出席者とともに会食を行います。これは、出席者へのお礼と、故人を偲ぶという2つの意味があります。施主の挨拶によってはじまり、挨拶にて終わるのが通例です。出席者が帰られる時に、引き出物を渡しましょう。
納骨式の準備物と費用
納骨式にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。おおよその目安を確認しておくと安心です。
準備物を用意しておく
納骨式の前には万全な状態で迎えられるよう準備しておくべきものがあります。
・お布施
・お供え物
・お花
・引き出物
・位牌
・遺影写真
これらは、忘れないようにまとめて持ち込めるようにしておきましょう。
お布施の費用
納骨式そのもののお布施の目安は3万円~5万円が相場です。しかし、納骨式は開眼法要や回忌法要と同時に行うことも多いため、それらを含める場合は別途用意しましょう。開眼法要は3万円~10万円程度で包まれる方が多いです。
「御車代」は5,000円や1万円、会食には参加されない場合は「御膳料」の5,000円~2万円を別途準備する必要もあります。お布施の額が決められている寺院もあるため、事前に確認しておくと安心です。
納骨時の作業費
納骨時にお墓の蓋を開け閉めしてもらう石材店への費用の相場は、5,000円~2万円となります。お墓の蓋の開け閉めはご自身で行えるケースもありますが、デザインによっては石材店に任せた方が良い場合もあります。
お墓への彫刻のための費用
これも、石材店に支払う費用となります。故人の戒名や没年を彫ってもらいます。おおよそ3万円~5万円で対応してくれるところが多いようです。
塔婆にかかる費用
お墓のそばに立てられる、細長い板のことを卒塔婆といい、略して塔婆と呼ばれます。塔婆は、お寺に用意してもらうもので、1本あたり2,000円~1万円となります。
会食の食事代・引き出物代
納骨式後の会食は、1人あたり5,000円くらいの食事がよく選ばれます。そして、引き出物に関しては3,000円~5,000円程度の品物が相場ですが、これは1家族につき1つで問題ありません。
お花代・お供えもの代
納骨式でのお供えものやお花は、通常のお墓参りの時よりも豪華にするのが一般的です。お花は、種類を問われることはないものの、バラやユリなどの香りが強いもの、花粉が落ちやすいもの、すぐに花が落ちてしまうものは避けるのが無難です。
納骨や法事のタイミングを知り準備を早めに行いましょう
納骨は、いつまでに行わなければならないといった期限はありません。
しかし、故人が亡くなったことに対して気持ちの整理をつけるという意味もあることを思えば、納得できるタイミングできちんと納骨したいものですね。
法事のタイミングも踏まえて検討し、準備は早めに行われると安心です。